アスベリンQ&A|よくある疑問を薬剤師が解説
「アスベリンってどんな咳に効くの?」「眠くなる?」「妊娠中でも大丈夫?」など、薬局でよく聞かれる疑問を、
薬剤師と患者さんの会話形式でわかりやすくまとめました。
アスベリンってどんな薬?
アスベリンって、よく処方で見るけど…結局どんな咳止めなんですか?
アスベリンは、「チペピジンヒベンズ酸塩」という成分の咳止めで、非麻薬性の中枢性鎮咳薬という仲間になります。
簡単にいうと、脳の「咳スイッチ」の反応を少し穏やかにしつつ、痰も出しやすくしてくれる薬ですね。
| 有効成分 | チペピジンヒベンズ酸塩 |
|---|---|
| 分類 | 非麻薬性中枢性鎮咳去痰薬(咳を抑えつつ、痰も出しやすくする) |
| よく使う病気 | かぜ、上気道炎、急性・慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症などに伴う咳・痰 |
| 剤形 | 錠剤、散剤(ドライシロップ)、シロップなど(年齢・飲みやすさで使い分け) |
| 特徴 |
・非麻薬性で、依存性・呼吸抑制が少ない ・赤ちゃんから大人まで、幅広い年齢で使われることが多い |
💡 ポイント
「コンコンと止まらない咳を少しマイルドにする」「痰を切れやすくして出しやすくする」
そんな役割をしてくれるのがアスベリンです。
どんな咳のときにおすすめ?
自分の咳にアスベリンが合ってるのか、いまいちイメージがわかなくて…。
アスベリンは、かぜや気管支炎などで続く「コンコン」「ゴホゴホ」の咳全般に使われることが多いです。
特に次のようなときに処方されやすいですよ。
| こんな咳 | アスベリンが使われることが多い場面 |
|---|---|
| 乾いたコンコン咳 | 夜に咳き込んで眠れない、咳をしすぎて胸やのどが痛いとき など |
| 痰がからむ咳 | 痰があるけれど、なかなか出し切れずゴホゴホしてしまうとき(痰を切る薬と一緒に使うことも多い) |
| 子どもの咳 | 赤ちゃん〜小児まで、咳がつらいときにシロップや粉薬で処方されることが多い |
一方で、ゼーゼーする強い喘息発作や、息苦しさが強い咳などのときは、アスベリンだけでは足りず、
気管支拡張薬・ステロイド吸入など別の治療が必要になることもあります。
咳が1〜2週間以上長引く、息苦しさ・胸の痛み・血痰などがあるときは、
「咳止めで様子を見る」だけではなく、必ず医師に相談してくださいね。
飲み方・タイミング・飲み忘れたとき
アスベリンって、1日何回飲むのが普通なんですか?
一般的には1日3回(朝・昼・夕食後など)で出ることが多いです。
量や回数は「年齢・体重・症状」で変わるので、必ず処方せんに書いてある回数どおり飲んでくださいね。
よくある飲み方のパターン
- 錠剤:コップ1杯程度の水またはぬるま湯で飲む
- 散剤・ドライシロップ:水やぬるま湯、お子さんなら少量のジュースやミルクなどに混ぜてもOK(混ぜても大丈夫な飲み物かは事前に確認を)
- シロップ:そのまま、または計量カップで量って服用(沈殿しているときは、飲む前に静かに振る)
効き始めと持続時間のイメージ
体感としては、内服後1〜2時間くらいで「少し咳がマシになったかも」と感じることが多く、
効果はずっと24時間続くわけではないため、処方された回数どおりに継続して飲むことが大切です。
飲み忘れたときはどうする?
- 気づいたときに、1回分だけ飲む
- ただし、次の服用時間が近い(目安4時間以内)なら、忘れた分はスキップして次の分から再開
- 2回分をまとめて飲むのはNG(眠気やふらつきなど副作用が出やすくなります)
よくある副作用と注意したいサイン
アスベリンって「比較的安全」って聞きますけど、副作用は全くないわけじゃないですよね?
そうですね。重い副作用は少ない薬とされていますが、
眠気や胃腸の不調・発疹などが出ることがあります。ここは一緒にチェックしておきましょう。
比較的よくみられる副作用
- 眠気・めまい、ときにボーッとする
- 胃腸症状:食欲不振、便秘、下痢、胃の不快感・むかつき、腹痛など
- 口の渇き など
尿が赤くなることがあります
アスベリンを飲んでいると、尿が赤っぽくなることがあります。これは、薬の代謝産物の色によるもので、多くは心配のいらない現象です。
ただし、痛みを伴う・血のように濃い赤が続く・何日も色が戻らないなどの場合は、
別の病気による血尿の可能性もあるため、医師に相談してください。
ごくまれだけど要注意な「重大な副作用」
頻度はかなり少ないですが、強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こることもあります。
服用直後〜数時間以内に、次のような症状が急に出たら要注意です。
・強い咳き込み ・腹痛 ・嘔吐 ・全身の発疹・かゆみ ・息苦しさ
→ 服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。
妊娠中・授乳中にアスベリンを飲むときの注意点
いま妊娠中なんですけど、先生からアスベリンが出ました…。赤ちゃんに影響はないですか?
添付文書上は、「妊婦さんには、治療上のメリットが大きいと判断された場合に慎重に使用」とされています。
授乳中も、母乳のメリットとお薬の必要性を見ながら判断することになっています。
実際の臨床現場では…
- 妊娠中・授乳中でも、短期間(数日程度)の咳止めとして処方されることは多いです。
- アスベリンは赤ちゃんにも使われる薬なので、その点からも大きな影響は少ないと考えられています。
- とはいえ、完全にリスクゼロと証明されているわけではないため、自己判断で市販薬を飲むよりも、必ず医師の指示で飲むのが安心です。
妊娠中に飲むときのポイント
- 妊娠している・妊娠の可能性があることを必ず医師・薬剤師に伝える
- 必要最小限の量・期間で使うことが基本
- 症状が軽くなったら、自己判断で急にやめず、一度医師に相談を
授乳中に飲むときのポイント
- 短期間の使用であれば、授乳を続けながら使われることも多い
- どうしても心配な場合は
- 授乳直後に薬を飲み、次の授乳まで少し時間をあける
- 一時的に搾乳して捨てる方法などを、医師・助産師と相談する
🤱 迷ったときの目安
「咳がつらくて眠れない」「咳でお腹が張ってしまう」など、ママのつらさが強い場合は、治療するメリットも大きいです。
不安な気持ちはそのままにせず、「妊娠(授乳)中で心配です」と遠慮なく相談してくださいね。
アスベリンのよくある質問Q&A
アスベリンは眠くなりますか?車の運転は大丈夫?
アスベリンで眠気・めまいが出ることがあります。個人差はありますが、
- 飲み始めは、眠気が出ないか様子を見る
- 眠気・ふらつきが出るようなら、車の運転や高所作業は避ける
もともと睡眠薬・抗不安薬・お酒など、眠気が出るものを一緒に使うと、さらにボーッとしやすくなるので要注意です。
どのくらいで咳が楽になりますか?
早い方だと飲んで1〜2時間くらいで、「さっきより少しマシかも?」と感じることが多いです。
ただ、咳の原因そのものを治しているわけではないので、アスベリンだけで完全に咳がゼロになるとは限りません。
3〜4日飲んでも全く改善しない・むしろ悪化している場合は、別の病気が隠れている可能性もあります。
そのときは「薬が切れたら終わり」ではなく、もう一度受診して原因を確認してもらいましょう。
アスベリンだけで咳が止まらないときは?
アスベリンは、「咳の強さを少しマイルドにする」「痰を出しやすくする」タイプの薬です。
感染症そのものへの治療や、気道の炎症をしっかり抑える薬が必要な場合には、これだけでは不十分なこともあります。
そのため、
- 抗菌薬やウイルス薬など、原因に対する治療が必要な場合
- 気管支拡張薬やステロイド吸入が必要な場合
- 逆流性食道炎・心不全など、咳の原因が別の病気にある場合
などは、アスベリンだけでは十分な改善が得られないことも。
「効かない!」と感じたら、自己判断で増量せず、医師に相談して薬の見直しをしてもらいましょう。
赤ちゃん・子どもが飲んでも大丈夫?
アスベリンは乳児〜小児にも使われることが多い薬です。シロップやドライシロップなど、子ども用に飲みやすい形もあります。
体重・月齢に合わせて量が細かく決まるので、必ず医師の指示どおりに飲ませてください。
- 飲ませてすぐに、強い眠気・ぐったり・発疹・呼吸の様子がおかしいなどがあれば、すぐ受診
- オムツが赤くなることがありますが、多くは薬による着色で心配いらないことが多いです(気になる場合は受診を)。
市販でアスベリンは買えますか?
「アスベリン錠20」という名前そのものは病院で使う処方薬ですが、薬局によっては、薬剤師と相談して
「処方せんなしで買える医療用医薬品」として扱っているところもあります。
また、チペピジンヒベンズ酸塩を含む市販の咳止めや総合感冒薬もあります。
ただ、妊娠中・授乳中・持病がある方・他の薬を飲んでいる方は、必ず薬剤師に相談してから使うようにしてくださいね。
メジコン・アストミンなど他の咳止めとの違いは?
どれも非麻薬性の中枢性鎮咳薬という点は共通ですが、少しずつ性質が違います。
- アスベリン(チペピジン):咳中枢を抑える+気道分泌を促し、痰を出しやすくする作用もある
- メジコン(デキストロメトルファン):咳中枢を抑える作用がメイン
- アストミン(ジメモルファン):同じく非麻薬性の咳止めで、眠気の出方など副作用のプロファイルが少し異なる
実際には、咳のタイプ・持病・一緒に飲む薬・妊娠の有無などを総合的に見て医師が選んでいます。
「前の薬の方が合っていた気がする」などあれば、遠慮なく医師・薬剤師に伝えてください。
お酒と一緒に飲んでもいいですか?
アスベリン自体は強い眠気薬ではありませんが、アルコールと一緒に飲むと眠気・ふらつきが強く出る可能性があります。
咳で体力も落ちていることが多いので、治療中の飲酒は控えることをおすすめします。
どれくらいの期間までなら飲み続けても大丈夫?
アスベリンは比較的安全性が高く、長期で使われることもある薬ですが、
咳止めを長期で続けないといけない状況自体が、原因の精査が必要なサインでもあります。
目安としては、
- かぜ程度なら1〜2週間以内で改善することが多い
- それ以上続く場合や、何度も同じ咳を繰り返す場合は、呼吸器内科などでの精査を検討
アスベリンは、「比較的安全で、幅広い年齢に使いやすい咳止め」ですが、
・眠気・胃腸症状・発疹などの副作用
・妊娠・授乳中の使用は、医師と相談のうえで
・長引く咳は、咳止めだけに頼らず原因の確認を
この3つを覚えておいてもらえれば、大きく安心して使えると思います。
※このページは一般的な解説であり、個別の診断・処方内容を置き換えるものではありません。
実際の服用については、必ず担当医・薬剤師の指示に従ってください。