インフルエンザ

インフルエンザ脳症Q&A:原因から予防・受診目安まで





インフルエンザ脳症の原因は?|患者さんと薬剤師のやさしい会話


まず結論
現時点で原因は一つに決めきれませんが、主流の考えは
①強い炎症(サイトカインの嵐)②血液脳関門の障害などが重なって、短時間で脳機能が障害される—というものです。(※詳しい根拠は文末の「参考情報」へ)

患者さんと薬剤師の会話で理解する

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インフルエンザ脳症って、ウイルスが脳に入って起こるんですか?

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一部の例外を除けば、ウイルスが脳内で増えまくる病気というより、インフルエンザに対する体の炎症反応が暴走して脳がダメージを受けると考えられています。医学的には「インフルエンザ関連脳症(IAE)」と呼び、子どもに多く、発熱から短時間で意識障害・けいれんが出るのが特徴です。

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高熱が原因なんですか?

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高熱そのものが単独で原因とは考えられていません。高熱は強い炎症のサインで、体内のサイトカイン(IL-6など)が増え、血液脳関門が傷んで脳がむくむ——そんな流れが起きると重症化しやすい、と説明されます。

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解熱薬は関係ありますか?

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すべての解熱薬が悪いわけではありません。ただし、小児では一部のNSAIDs(例:ジクロフェナク、メフェナム酸など)は慎重にとされています。発熱時の第一選択はアセトアミノフェンが基本です。迷ったら必ず医師・薬剤師に相談してください。

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予防できますか?

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インフルエンザ自体にかからない・重くしないことが最も現実的です。つまりワクチン・手洗い・早めの受診。まれに「急性壊死性脳症」という重いタイプがあり、遺伝的素因が関わる例もありますが、発生自体は稀です。

なぜ起こる?(やさしい整理)

  1. 呼吸器でのインフルエンザ感染 → 体が強く反応。
  2. 炎症物質(サイトカイン)が急上昇(IL-6など)。
  3. 血管内皮や血液脳関門が傷む → 脳がむくみやすい。
  4. 短時間で意識障害・けいれん・異常言動へ。

※ウイルスが脳内で検出されることは多くなく、免疫の暴走(高サイトカイン血症)が中心と説明されます。重症型の急性壊死性脳症(ANE)では、左右の視床などがダメージを受けやすい所見が知られています。

関わりうる要因

  • 年齢:特に小児。
  • 強い炎症反応:IL-6などの上昇が重症例で問題に。研究報告あり
  • 遺伝的素因:一部でRANBP2などの関与が指摘(ANE)。
  • 解熱鎮痛薬の選択:小児では一部NSAIDsは慎重。発熱時はアセトアミノフェンが基本
  • インフルエンザの流行状況:シーズンにより小児の脳症報告が増える年があります。

※「〇〇を飲んだから必ず起こる/防げる」という単純な因果ではなく、複数の因子が重なって発症します。

すぐ受診・救急の目安

  • けいれんが続く/繰り返す、意識がもうろう、呼びかけに反応しない
  • 意味不明の言動・幻覚のような様子、歩けない/まっすぐ立てない
  • 嘔吐が止まらない、ぐったりして水分が取れない、激しい頭痛
  • 高熱が下がらず急に様子が変わった、親御さんが「いつもと違う」と強く感じる

自宅療養中の未成年では、転落などの事故防止のため、窓・玄関の施錠や見守りも大切です。

よくある質問

Q. インフルエンザ脳症の「原因」を一言で言うと?

A. 免疫反応の暴走(高サイトカイン血症)による脳の障害が中心、が一番伝わりやすい表現です。直接ウイルスが脳で増えるタイプはむしろ少数と考えられています。

Q. 解熱薬で悪化するって本当?

A. 全部が危険ではありません。ただし小児では一部のNSAIDs(例:ジクロフェナク、メフェナム酸など)は慎重という公的な見解があります。アセトアミノフェンが基本。市販薬を自己判断で重ねず、医療者へ相談してください。

Q. タミフル(オセルタミビル)などの薬が脳症の原因ですか?

A. 脳症の主因はインフルエンザに伴う免疫反応と考えられます。一方で、未成年で異常行動の注意喚起が出ており、服用中の見守りは大切です(因果は明確でないが注意喚起あり)。

Q. ワクチンで脳症は防げますか?

A. 直接「脳症だけ」を予防するワクチンではありませんが、インフルエンザ感染や重症化を減らすことで、結果的に脳症リスク低減につながると考えられます。毎シーズンの接種をご検討ください。

Q. 「急性壊死性脳症(ANE)」って何ですか?

A. IAEの中でも重症型で、左右の視床などが障害されやすいタイプ。まれにRANBP2などの遺伝的素因が関わる報告もあります。発症は稀ですが進行が速いため、疑わしい症状があればすぐ受診を。

参考情報(根拠・アップデート)

  • IAEは「呼吸器でのインフル感染に続く免疫反応の失調で生じる神経症候群」と定義・概説。米CDCの最近のレビュー。 [oai_citation:0‡疾病管理予防センター](https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/74/wr/mm7436a1.htm?utm_source=chatgpt.com)
  • 病態は高サイトカイン血症血管内皮・血液脳関門障害が指摘され、病理では脳浮腫が目立つ一方で炎症細胞浸潤は乏しいと報告。国立感染症研究所(NIID)。 [oai_citation:1‡感染症情報センター]
  • 小児の発熱時、一部NSAIDsはインフルエンザ脳症への関与の可能性があり、使用は慎重に。アセトアミノフェンが基本との公的解説。厚生労働省。 [oai_citation:2‡厚生労働省]
  • 急性壊死性脳症(ANE)ではRANBP2など遺伝素因が関与する例があるとの臨床報告・総説。JAMA小児コホートやレビュー等。 [oai_citation:3‡PubMed]
  • 重症例でIL-6上昇などの炎症マーカーが関与する研究、成人例含むレビューや国内報告。 [oai_citation:4‡PMC]
  • 未成年への抗インフルエンザ薬投与時の異常行動に関する注意喚起(因果関係は不明だが見守り推奨)。厚労省・PMDA資料。 [oai_citation:5‡厚生労働省]
  • 近年の流行期に小児のIAE/ANEの報告増が議論に。速報やニュースも参考(公衆衛生上の注意喚起)。 [oai_citation:6‡疾病管理予防センター]

※学術情報は更新されます。最新は小児科・神経内科・感染症専門医の診療指針や公的情報をご確認ください。

この記事は一般向けの解説です。個別の診断・治療は必ず医師の指示に従ってください。


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