HRTと他の薬(抗うつ薬・睡眠薬など)の併用注意
薬剤師がやさしく解説
目次
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HRT+他剤、なにが心配?(会話)
👩🦳患者さん:HRTを始めてだいぶ楽になりました。ただ、抗うつ薬と睡眠薬も飲んでいて…一緒に使って大丈夫でしょうか?
👩⚕️薬剤師:併用できることが多いですが、代謝(CYP)や蛋白結合、凝固、発作閾値などで注意点があります。要点を一緒に確認しましょう😊
特に注意したい組み合わせ(会話+ポイント)
① てんかん薬:ラモトリギン(Lamotrigine)
👩🦳:ラモトリギンも飲んでいます。HRTと関係ありますか?
👩⚕️:あります。エストロゲンはラモトリギンの血中濃度を下げることが知られています。気分安定や発作コントロールが崩れたら要注意。
→ 医師と相談して用量調整や血中濃度モニタを行いましょう。
→ 医師と相談して用量調整や血中濃度モニタを行いましょう。
② 血液サラサラ薬:ワルファリン/直接経口抗凝固薬(DOAC)
👩🦳:心房細動でワルファリンを飲んでいます。
👩⚕️:HRT自体に血栓リスクの配慮が必要です。ワルファリン治療中は、出血・血栓のバランスをより慎重に。
→ 開始・変更時はPT-INRの頻回チェック、出血徴候(皮下出血・歯ぐき出血・黒色便)に注意。
DOACでも同様に、腎機能と出血サインをこまめに確認しましょう。
→ 開始・変更時はPT-INRの頻回チェック、出血徴候(皮下出血・歯ぐき出血・黒色便)に注意。
DOACでも同様に、腎機能と出血サインをこまめに確認しましょう。
③ 甲状腺ホルモン:レボチロキシン(チラーヂン)
👩🦳:甲状腺の薬も飲んでいます。
👩⚕️:経口エストロゲンはTBG(結合タンパク)を増やし、有効な遊離T4が相対的に下がることがあります。
→ HRT開始・用量変更後はTSH/FT4を再評価し、必要ならレボチロキシンを微調整します。
※ 貼付・ジェルは初回通過を避け、影響が穏やかなことがあります。
→ HRT開始・用量変更後はTSH/FT4を再評価し、必要ならレボチロキシンを微調整します。
※ 貼付・ジェルは初回通過を避け、影響が穏やかなことがあります。
④ 抗うつ薬・不安薬・睡眠薬
👩🦳:SSRIやSNRI、時々ベンゾ系の睡眠薬も…。
👩⚕️:基本は併用可。むしろ更年期のほてりにはベンラファキシン等が有効なことも。
ただしふらつき・眠気の相加には注意し、就寝前の服用タイミングや最小有効量を意識しましょう。
ただしふらつき・眠気の相加には注意し、就寝前の服用タイミングや最小有効量を意識しましょう。
⑤ 酵素誘導薬・相互作用例
👩🦳:他に気をつける薬は?
👩⚕️:カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシンなどの酵素誘導薬はエストロゲン濃度を下げ、効果減弱につながることがあります。
また、グレープフルーツは経口エストロゲンの代謝に影響する可能性。サプリではセントジョーンズワートが代表的な相互作用源です。
また、グレープフルーツは経口エストロゲンの代謝に影響する可能性。サプリではセントジョーンズワートが代表的な相互作用源です。
迷ったら原則:開始・中止・用量変更の“前後1〜2か月”は、症状日誌・必要検査(INR/TSH/薬物濃度等)で客観的にチェック。
併用チェック早見表
| 相手薬 | 主な懸念 | ポイント | 現場のコツ |
|---|---|---|---|
| ラモトリギン | HRTで血中濃度↓ → コントロール悪化 | 濃度/症状モニタ、必要なら用量調整 | 開始・中止・貼付→内服切替時も注意 |
| ワルファリン/DOAC | 出血/血栓リスクのバランス | 開始・変更時にINR/腎機能・出血サイン確認 | 新規症状(息切れ、片脚腫脹、黒色便)は即連絡 |
| レボチロキシン | 経口HRTでTBG↑ → FT4相対↓ | TSH/FT4再評価、必要に応じて増量 | 貼付・ジェルは影響が穏やか傾向 |
| SSRI/SNRI/NaSSA | 眠気・ふらつきの相加 | 最小有効量/服用タイミング調整 | ベンラファキシンはほてり改善に有用例あり |
| ベンゾ系・Z薬 | 鎮静の相加 | 就寝前に限定、翌朝の眠気に注意 | 高齢者は減量・短時間作用型で |
| カルバマゼピン等誘導薬 | HRT効果↓ | 症状再燃チェック、切替/増量検討 | 主治医間で情報共有 |
| セントジョーンズワート | 代謝促進→HRT↓、セロトニン症候群リスク | 原則併用回避 | サプリも必ず申告 |
| グレープフルーツ | 経口エストロゲンの代謝影響 | 大量摂取を控える | 貼付・ジェルでは影響小さめ |
安全に併用するコツ
- お薬手帳を一冊に統一(婦人科・心療内科・内科で共有)
- 開始・中止・用量変更のときは受診間隔を短めに
- 眠気が出る薬は就寝前に固定、朝のふらつきに注意
- 血栓サイン(片脚の腫れ・痛み、息切れ、突然の胸痛)や出血サインはすぐ連絡
- サプリ・健康茶も必ず申告(SJWなど)
よくある質問(Q&A)
Q1. 抗うつ薬とHRTは、どちらを先に始めれば良い?
症状の強い方からでOK。ほてり・睡眠障害が主体ならHRT、気分や不安が主体なら抗うつ薬を先に。併用も可能です。
Q2. ラモトリギンを飲んでいるのでHRTは諦めるべき?
諦める必要はありませんが、濃度低下に注意。主治医と連携して用量調整や血中濃度測定を行いましょう。
Q3. 貼り薬やジェルだと相互作用は少ない?
初回通過を避けるため、経口より影響が穏やかなケースがあります。ただしゼロではないので油断は禁物です。
Q4. サプリなら自己判断で足してもいい?
NG。セントジョーンズワートなどは相互作用が強く出ます。必ず医師・薬剤師に相談してください。
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HRTと漢方・サプリの併用(エクオール・加味逍遙散など)をやさしく整理します。
「どこまで一緒に使って大丈夫?」「飲み合わせの線引き」を会話形式で解説します🍵
※本記事は一般向け解説です。実際の治療・併用判断は必ず主治医の指示に従ってください。
薬剤師のはる🩺