亜鉛華軟膏 vs ワセリン|違い・使い分け・妊娠授乳中の注意までやさしく解説
どちらも「皮膚を守る」ケアですが、得意分野が少し違います。会話でサクッと全体像→場面別の使い分け→塗り方→費用→Q&Aの順でまとめました。
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患者さん:家に 亜鉛華軟膏 と ワセリン があるんですが、どっちをいつ使えばいいですか?
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薬剤師:かんたんに言うと、ジュクジュク=亜鉛華軟膏、カサカサ=ワセリン が基本です。もう少し具体的に見ていきましょう。
目次
基本の違い(まずはここだけ!)
| 項目 | 亜鉛華軟膏(亜鉛華単軟膏等) | ワセリン(白色ワセリン・プロペト等) |
|---|---|---|
| 主成分 | 酸化亜鉛(ZnO)+基剤(ワセリンなど) | ワセリン(高純度の油脂性保護剤) |
| 主な働き | 軽い抗炎症+収れん(湿りを乾かす)+保護 | 水分の蒸発を防ぐ(高い保湿)+物理的保護 |
| 得意な場面 | おむつかぶれ、あせも、汗疹でジュクつく所、軽いすり傷の周囲保護 | 乾燥肌、手荒れ、唇の荒れ、薬の上の保護膜、摩擦予防 |
| 見た目/質感 | 白色・やや固め。塗ると白っぽく残る | 無色透明・ややベタつくが伸びは良い |
| におい・味 | ほぼ無臭(※口に入れない) | 無臭(※口に入れない) |
ワンポイント:炎症が強く「赤くヒリヒリ」だけど乾いた皮むけならワセリン。湿って衣類に貼りつく・浸出液が出る感じなら亜鉛華軟膏が合いやすいです。
場面別・使い分け早見
🧷 おむつかぶれ乳幼児OK
- 赤み+ジュクジュク → 亜鉛華軟膏で保護・乾かす
- 普段のこすれ予防 → ワセリンを薄く
🧤 手荒れ・乾燥ひび
- カサカサ・ささくれ → ワセリン
- 傷周囲が湿って白くふやける → 亜鉛華軟膏
🏃♀️ 摩擦・マスク蒸れ
- こすれ予防(ラン/靴/下着)→ ワセリン
- 汗で湿りトラブル → 亜鉛華軟膏
💊 ステロイド等と併用
- 基本は薬 → 10〜30分後にワセリン(膜で守る)
- ジュク部は医師指示があれば薬 → 亜鉛華で覆うことも
正しい塗り方(共通)
- 洗ってやさしく乾かす(こすらない・ポンポン押さえる)
- 患部が小豆〜米粒大の量から。広範囲は薄く均一に
- こすり込まず置くように塗る(膜を作るイメージ)
- おむつ・衣類はすぐ当てず1〜2分置くとヨレにくい
- 1日1〜数回。汚れたら優しく拭き取り塗り直し
費用の目安(ざっくり)
- OTC(市販):
・亜鉛華軟膏 20〜50g:およそ ¥400〜¥900
・白色ワセリン 50〜100g:およそ ¥300〜¥800 - 処方(保険):基剤量・自己負担で変動。
例)50g 調剤で自己負担3割なら ¥100〜¥300台が目安(調剤料等により増減)。
※メーカー・容量・地域で差があります。あくまで参考価格。
妊娠・授乳中の注意
- どちらも外用での全身影響は極めて少ないとされ、通常量のスキンケア目的なら一般に使用可。
- ただし広範囲に厚塗り+長期は避け、必要最小限に。
- 授乳中の乳頭・乳輪に使う場合は、授乳前にやさしく拭き取りましょう。
- 成分に対するアレルギー歴がある方は使用前に相談を。
- 乳児への使用は一般に可。目・口の中・深い傷には入れない。
副作用・やめどき
起こりうること
- 接触皮膚炎(赤み・かゆみ・ヒリつき)
- 塗りすぎで毛穴づまり・テカリ
- 汚れが残ってかえって悪化(しっかり優しく落とす)
受診の目安
- 2〜3日で悪化、1週間で改善ゼロ
- 広がる水疱・黄色い膿・強い痛みや発熱
- 顔全体や陰部などデリケート部で悪化
どっちが向いてる?かんたんチェック
- 触ると湿ってテカる/衣類に貼り付く → 亜鉛華軟膏
- 粉ふき/つっぱり/皮むけ → ワセリン
- こすれ予防(靴/スポーツ/マスク) → ワセリン
- 汗疹で赤く湿る皮膚 → 亜鉛華軟膏
よくある質問(Q&A)
Q1. 併用はできますか?順番は?
できます。薬(例:ステロイド)→10〜30分後にワセリンで保護膜が基本。ジュクジュク部は医師指示があれば薬→亜鉛華で覆うこともあります。自己判断で混ぜるのは避け、重ねるのが安全です。
Q2. 顔やまぶた、唇にも使えますか?
ワセリンはバリア目的で顔・唇にもよく使います。亜鉛華軟膏は白残りしやすいので顔は用途を選びます。目の中には入れないよう注意。
Q3. どのくらいの量を塗ればいい?
「膜ができて光る程度」を目安に薄く均一。指先小豆大で手のひら1枚分くらいに広がります。ベタつきが強ければ付けすぎです。
Q4. いつやめればいい?毎日塗っても大丈夫?
症状が落ち着いたら回数を減らし中止でOK。ワセリンは保湿として継続可。亜鉛華は湿りが治まったら終了が目安。
Q5. 衣類・おむつに付くのが気になります。
少量を広く伸ばし、1〜2分置いてから衣類やおむつを当てると付着減。どうしても気になる部位はガーゼを薄く当てると◎。
Q6. 市販と処方の違いは?
有効成分は同じことが多いですが、純度・基剤・硬さが異なる場合があります。広範囲・長引く場合や赤ちゃんのデリケート部位は医療用/調剤のほうが使い心地が合うことも。
患者さんと薬剤師の会話(もう少し具体例)
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患者さん:子どもの首まわりが汗で赤く湿ってます。
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薬剤師:汗を洗い流して乾かしたら、亜鉛華軟膏を薄く。寝る前はガーゼで衣擦れもガードしましょう。乾いてきたらワセリンに切り替えます。
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患者さん:マラソンで太ももが擦れて痛いです。
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薬剤師:走る前にワセリンで滑りを作るのが◎。もし擦れて湿ってしまったら、その日は運動を休んで亜鉛華軟膏で保護を。
保管と使い切り
- フタはしっかり閉めて直射日光・高温多湿を避ける
- 開封後は6〜12か月を目安に(清潔に使えばもう少し保てる)
- チューブ口は触れさせず、汚れたら清潔なガーゼで拭く
注意:化膿(膿・熱感)がある、急に広がる、痛みが強いなどは自己判断での外用継続はNG。早めに受診してください。